ARCTIC CIRCLE

2002年 2月16日 スカンジナビア航空984便は寒空の成田を定刻に飛び立った。目的地はコペンハーゲン。飛行時間11時間半。長い行程である。シベリアの上空を飛んでいると、モニターに映し出された蛇行する自然河川がかなりいけている感じである。おそらくアクセスにはソビエトのおんぼろヘリしか使えないんだろうな・・・。

 コペンハーゲンのカストロップ空港は意外にも巨大だった。入国審査はあっけなく終了。初めてのヨーロッパなのでなんだか緊張してしまう。だいたい今までが南の島系統しか攻めてないため、都会に慣れていないのが問題なのかもしれない。とにかく、カストロップ空港はでかかった。おしゃれなお店がいっぱいだったが、乗り継ぎに忙しくゆっくり見ることはできなかった。帰りに見ることにしよう。

SK420便でスウェーデンのアーランダ国際空港を目指す。約1時間半のフライト。左後方に雲の水平線に沈む夕日が凄く鮮やかであった。

アーランダ国際空港で荷物を受け取った。ヨーロッパ便は20sに荷物を抑えないといけないため必然的にザックが重たくなってしまう。シャトルバスで空港近くのホテルにチェックイン。疲れを癒すためのビールを生でいただくが、やっぱり高い。だいたい0.5リットルで出てくるのだが、60SEK(スウェーデンクローネ)くらいする。日本円にすると1000円くらいだ。高い。2杯も飲めばもういいやって感じになってしまう。時差ぼけがバリバリで早くから爆睡であった。

2月17日 早朝からいそいそと出かける用意。ここで初めて北欧の朝飯を食う。スモーゴスボードと呼ばれるスタイル。いわゆるビュフェ、まあバイキングである。まずニシンの酢漬けを頂くのが流儀のようなので、食ってみた。意外と美味い。味が濃いがまあ美味い。あとは普通の食事で別にコレといって特殊なものはない。まあ、さすがに空港近くのホテルだけあって豊富な料理の種類であった。

北欧の朝焼け

再びアーランダ国際空港から出発。今日は国内線。

併記してあれば助かる・・・


朝のせいか空港は空いていた

天気は上々である。バルト海を右手に見ながら北上を続ける。眼下の雪が少しずつ増えていくことで北極圏の近まりを感じる。
ボスニア湾のどん詰まりあたりの結氷が見える頃、飛行機は左へ旋回し内陸へと向かう。だだっ広い平原にたくさんの河川と湖が真っ白に光っている。次第に饅頭みたいな山がポツポツと見え始めた頃、KIRUNAに到着した。

北極圏だ!!とは言うもののあまり寒くないし、雪も多くない。まずはレンタカーをゲットして荷物を詰め込む。
このあたりはそれぞれの街にインフォメーションセンターというのが存在していて、観光客に情報をくれるらしいので、まず中心街へ向かう。ところが、日曜日ということもあってどこもクローズ。閑散としている。もちろんインフォメーションセンターもやってないので、観光がてら教会を見てみた。かなり立派な感じであった。


KIRUNA kyrka

駐車場ならぬ駐そり場

教会の前のフリーマーケット
狐の毛皮でできた帽子が1200SEKだったけど、どうせ使わないので買わなかった。

ちなみにKIRUNAの近くのJukkasjärviには多分誰もがメディアで見たことのあるICE HOTELがあります。
何から何まで氷でできているってやつね。

KIRUNAの街をあとにしていよいよ西へ向かう。このあたりはすでにラップランド地方に属していてサーメ人の文化が深く根付いているらしい。郊外には今でもサーメ人がトナカイとともに住んでいるらしい。街からは鉄鉱石の採掘現場が異様にでかく見える。
その斜面に結構いいシュートがあったが氷のようだった。
どんどん進んでいくとあたりは雪原と凍った湖、そして饅頭型の巨大丘が交互に広がる風景。時折トナカイが道路近くにたたずんでいる。2時間ほどでabiskoに着く。サーメの言葉で森の海という意味らしいが今はただただ大雪原。ここにはKungsleden(王様の散歩道)が1000kmにもわたってあるそうだがとても歩く気にはなれなかった。

その近くにはBjörklidenというスキー場があったのだが、急いでいたこともあり今回はチェックせず。

abiskoから1時間かからずにいよいよRiksgränsenスキー場に到着した。長かったぞ!!遠いし。
でもやっと北極圏スキー場に到達した。2時頃には着いたのだが様子がおかしい。というのも暴風雪といった感じでリフトが動いていない。ホテルのロビーには所狭しと若造が氾濫している。オープンしたてで、この嵐じゃあまともにリフト動いてないだろうな・・・。今の季節で、日の出が9時頃、日の入りが3時頃だから、2月になってやっとスキー場がオープンするのだ。当然、ナイターなんかありゃしない。とにかくこの日は滑走は無理であった。
チェックインするとこじんまりした1kといった感じの部屋である。広さ的にはニセコスコットぐらいかな。それで3人眠れる仕様になっており、自炊も可能だ。とりあえず落ち着くと、あとは時差ぼけに任せて眠りまくり・・・zzzzz・・・・・・。

2月18日 時差ぼけなので滅茶苦茶早起きである。風も止んでいる。フロントでリフト開始時間を聞くと9時という人と10時という人がいる。とりあえず9時スタートと考え用意する。どうもセンター4の癖があって早めに用意してしまうのだが、ここでは通用しなかった。9時になっても動かない。10時になっても動かない。11時になっても動かない。どういうことじゃーーー!!


実はこの看板に書いてあったんです。英語表記が全くないので最初は意味が分かりませんでしたが
どうやら雪崩の危険性が高くレベル5とかなり危険な状態だったのです。

話によれば昼からダイナマイトでアバランチコントロールするらしい。ということでただ待っていてもしょうがないので、対面側にあるMariepiggという小さな丘に登ることにした。とりあえず滑る前に登る。これが基本でしょう。
見た目よりもかなり固くもなかが冷えて固まったような状態である。滑りづらいことこの上ない。
時折、ダイナマイトの音がこだましていた。軽く流して部屋に戻った。


狭いけどくつろげる部屋

売店に出前一丁が売ってあったのでとりあえず自炊で頂く。北欧で食べる出前一丁もなかなかいけてました。
まったりしつつ窓の外を眺めるとなんと!リフトが動き始めた。急いで着替えリフト乗り場へ。日没まで1時間ちょっとという感じだったせいか90SEKであった。いよいよペアリフトに乗り込む。曇ってるし暗いせいでイエローのレンズでも起伏は全く見えない。
しかも、岩がゴツゴツと出ていてかなり薄くしか積もってなさそう。

まずは滑ってみようということでピステン周りから攻める。といっても1往復分しかかけてないし30度くらいでわりと急である。
おまけにパウダーどころか超ハードパックである。俺の海外遠征は呪われているのか・・・。
さらにもともと積雪はそんなに多くないようで自然の地形がもろに出ていて、すぐに薄い雪の下に隠れた岩に乗り上げてしまう。
DPTはボロボロです。

何本か滑ると地形もわかってきて調子に乗る。しかし、見えないというのは恐ろしいものでクリフの5mくらい手前で気づいてかわしたというのもあった。それなりに飛んだり、ミニシュートを滑ったりして楽しんだ。おまけにシュートの中を転げて落ちたりもした。


rider:charlie photo:tsukahara

rider:cheebow

rider:tsukahara

あーーーー危ない・・・。


charlie!! そこは危ないぞ!!

さすがにテレマーカーが多かった。アルペンより多い感じだ。日本とは雰囲気も違う。
ボーダーもパウダーというより飛び系である。
まあ、すべり初日としてはこんなもんでしょう。ホテルまでの道路を滑って板をはずしたときに、背後で何か物音がする。
するとホテルの前にそびえ立つゲレンデ(といっても急斜面で岩だらけ)の上部からおよそ200mくらいの幅で一斉に面がずれ始めた。雪崩だ!!!一気に下まで雪崩れてくる。もの凄い雪煙だ。初めて実物を見たが大迫力!これは死ねます。
岩はあるものの美味しそうに見えた斜面だけにショックだった。規制がなければ間違いなく入っていそうな斜面である。
改めて雪崩の怖さが実感できた瞬間だった。


この写真に写っている範囲がすべて上部から雪崩れた。
わかりにくいかもしれないが断層面は深いところで1mはありそうだった。
下部の谷間にデブリが見える。

ところで、北欧はアルコールが異常に高いのをご存じだろうか?どうやら準禁酒国のようである。アルコールの度数で値段が違うのだ。ビールもカールスバーグが多いのだが、2.8%と3.5%で倍近く値段が違っていた。だいたい2.8%じゃ酔えないでしょ。その前にお腹いっぱいになっちゃうよ。入国前に成田から買っていったスコッチがとても重宝した。北欧に行くときは酒は持参すべきです。

21時頃から少し晴れ間も出てきたので外に出てみると、北の空の雲が妙に明るい感じだ。ゆらゆらとしている。最初は半信半疑だったがそれが、カーテンのように動き出したとき確信に変わった。オーロラだ!!
晴れ間が少ないので空全体とは行かないがそれから1時間ほどオーロラショーが楽しめた。自然の神秘だね。太陽との会話か。

2月19日 朝からまたしてもスモーゴスボード。ここは種類は少ないがたらこのペーストがいけていた。ご飯が欲しくなる懐かしの味であった。
今日は朝からリフトが動いている。しかし、別に争って乗るほどではないので、ゆっくりと用意し、チェックアウト。
リフトを乗り継ごうと思っていたのだが上のリフトはやってない。

リフト降り場付近

今日は視界もいいのでさらにノルウェー側に滑り込んでみる。ちょうど国境近くにあるので滑って国境を越えることも可能だ。
急斜面には薄い雪の下にブルーアイスが見え隠れしている。急な斜面の下にはデブリがあり、起伏も激しく、雪も固いため超テクニカルな滑りが要求された。当然転びまくってしまった。

しばらく遊んだあと、上部のリフトの終点までハイクして反対の斜面に行ってみた。ここはワイスっぽい感じでとてもメローな斜面が広がっていた。起伏はあっても木はないのでライン取りは自由。日陰を選べばパックされた気持ちよいパウダーが食えた。

ここでcharlieはTバー初体験となる。おっかなびっくりでトライしたら何とかいけることがわかった。

しかし、股が痛い。


あまりにも寒いので小屋で休憩。マイナス20度くらいかな・・・。

良い斜面を求めて・・・

rider:tsukahara


滑り終わって・・・


Riksgränsenスキー場上部からノルウェー方向の眺め

午前券だったのに1時過ぎまで滑っちゃった。Tバーも克服したしいい気分だ。
リフト売り場近くのカフェでまったり昼食とした。昨日のデブリがかなり迫ってきている。しかし驚いたのはそこで災害救助犬によるデブリの捜索が行われていることだった。実際に人が埋まっていて、犬を訓練している。こういう姿勢が日本と違うとこなのかも・・・自己責任の重さがひしひしと感じられるスキー場だ。

写真ではわかりづらいけど日本ではとてもゲレンデにはしないようなテレインでっせ。

Riksgränsenを後にしていよいよノルウェー(ノルウェー語でNORGEって表記するの知ってた?)のNARVIKに向かう。
50km弱なのですぐである。国境といっても税関申告なしの道路を通ればノーチェックである。
なんだか凄い田舎の町を想像していたのだが、実は結構でかい街だった。ショッピングセンターがどーんとあって圧倒された。
NARVIKでの宿はスキー場のリフト乗り場そばNorlandia Narvik Hotellである。駐車場にはコンセントがあってそれに車のバッテリーをつなぐようになっている。寒さのためにエンジンがかからなくなるのを防ぐ装置のようだ。

今日は結構滑ったし、上出来でしょうってことで夕飯は中華。久々に上手かった。結果的にいうとこの旅行中で最も美味かった。
やっぱり東洋人は米食わなきゃね。

2月20日 昨日、判明した一大事があった。今週オープンしたNarvikスキー場だが実は2月いっぱいリフトはナイターのみということだった。どうするんだ・・・?
Riksgränsenではスキー場は登っちゃダメって言われてたのでここでは慎重に行動する。
でも、街のインフォメーションセンターで聞くと林道登れば全然オッケーだよってかんじだった。ノルウェーという国は地主の承諾なく誰でも自由に自然の中に入れるらしい。そういえばやたらとクロスカントリーの人たちを見かけるし、今回のソルトレイクでも上位にいたもんなぁ。

まあ、大事をとってゲリラ的に登ることにする。車で行けるとこまで上がってから林道を登り始める。登り始めるとすぐに下界がはっきりと見渡せるようになり景色の美しさにしばし足を止めることも多かった。
3月1日から正式にオープンするらしく、スキー場のスタッフが林道をやたらとモービルで行き交っていたが、特に何も言われたりはしなかった。登り初めて40分くらい経ったとき後ろからピステンが登ってきた。先に行かせるために避けると横で止まるではないか。ドライバーがトップまで行くのかと聞いてくる。何か言われるのかなぁと思いきや、後ろに乗せてくれるとのこと。
超ラッキー!!もちろん人が乗るようには加工してないので、非常に苦しい体勢だったが、なんと最終リフト降り場直下まで連れていってくれた。一気に高度を稼いだので、あまり汗もかかず登頂してしまった。

本当にラッキーだった


背景の海から高度がわかるでしょ


最北のリフト降り場にバレルスラッシュのステッカーを貼ってきました

登頂した頃から急に雲がかかりだしてきて光が足りなくなってきた。楽して登ったので担いできたビールも飲めないぞ。

それなりに美味しそうな場所を選んで海に向かって滑り降りる。これやりに来たんだもんなぁ。


rider:charlie photo:tsukahara

rider:cheebow

rider:non-chan

rider:tsukahara

rider:charlie photo:tsukahara

夜、ふらふら街を歩いているとこんな看板見つけた。

北極点まで2420kmだそうな。まだまだ遠いんだね・・・。

ノルウェーのコンビニ

2月21日 滑り的にはもう充分ってことでロフォーテン諸島に向かってドライブしてみた。あまり遠くまではいけないけどフィヨルドの冬は堪能できた。途中でポールというおっさんに拾われて家に招かれ、コーヒー攻撃にあってカフェインバリバリになるハプニングもあった。

郵便屋さんってどこの国も赤いのかな

身震いしませんか?

夕方は最後の締めくくりにNarvikスキー場でナイターを滑った。ここは本当のTバーでなかなかいい体験ができた。
ローカルは凄い勢いでかっとんでいるのもいれば、相変わらずぶっとびのテレマーカーもいる。バーンはアイシーで割と急だから
エッジ引っかけて転んだら大事になりそうだった。

NARVIKの夜景を見ながら滑る・・・実は見る余裕がなかったりして・・・

2月22日 本日はストックホルムまで戻る予定なので早起きして出発。昨日、遅くまでオーロラチャレンジしてたもんだから眠い眠い。それでもまあKIRUNAまで180kmほどあるから余裕を持って出なければってことで6時過ぎに出発。順調にNARVIKを離れしばらく走り少し内地に入ったとき、


通行止めである。
降雪はないのだがふきだまっていて道がなくなっている。
この時点で7時前だったが屈強なおじさん達がこれから除雪してくれるとのこと。9時には終わるらしい。
おいおい。
とりあえず待っている間、飛行機に乗り遅れてことを想定して汽車で行こうとか
明日まで待とうとか色々考えてしまった。

結局、9時頃には除雪が完了し、なんとかスウェーデンに戻ることができた。そこからはひたすら走って11時半にはKIRUNAに到着。着いてみれば、どうやら北欧中天候が悪いらしく、飛行機もかなり遅れていた。結果からいうとそんなに急がなくてもよかったんだ。損した気分だ。
 空港のロビーはごった返していた。感じのいいレストランも混雑で台無しだ。結局ストックホルムについたのは日暮れになってしまった。最初は電車で市内に向かう気だったが、湿った雪の猛吹雪で外は歩ける状態じゃなかったので、タクシーで直接、ファーストアマランテンホテルに向かった。市内まで一律350SEKである。色々観光する気だったが、時間もないし雪も降ってるのでレストランで夕飯にすることにした。ストックホルムの地下鉄の駅は一見の価値がある。洞窟みたいに作ってあって壁でボルダリングできそうな雰囲気である。食事はGamla stanのZum Franziskanerというスェーデン料理のお店に入った。ビールも美味しくElkの肉やソーセージが旨かった。本当はヤンソン氏の誘惑という料理が食べたかったのだが今回は発見できなかった。

Gamla stanの町並みは本当に美しい。雪がいっそう雰囲気を盛り上げる。

ノーベル賞の晩餐会に出る食事が食べられるレストラン

帰りに王宮を見て帰ったがこれがまた格好いいのだ。近衛兵が時間ごとに行進している。歴史には興味のないcharlieだがここは気に入った。最後にホテルの横のスポーツバーでウォッカを軽く引っかけて終了。もっと激しい夜の過ごし方もガイドブックに載っていたがちょっとやめといた。いつかバレルの誰かに行ってもらおう。

2月23日 昨日Gamla stanがあまりにも美しかったので早起きしてもう一度見に行った。

歴史を感じさせる街並みが続く


イタリア・バロック、フランス・ロココ様式の王宮

10時半にホテルにタクシーが迎えに来てくれたが帰りはなぜか495SEKであった。
空港でもスムースにチェックイン。おみやげにトナカイの毛皮を買い、アッという間にコペンハーゲンに着いた。乗り継ぎ時間はぎりぎりだし何もできないので急いで国際線ターミナルへ。ところがここでトラブル発生。charlieの搭乗券にシートナンバーが印刷されていない。カウンターで聞くとどうやらオーバーブッキングっぽい雰囲気。フランクフルトまわりで帰ってくれといわれる。
そんなこと言ったって国内線で後二回も乗り継ぐんだから、そんなことはできないとごねたら、なんとかシートはゲットできた。
近くにいた日本人の女の子2人が犠牲になっていたが知ったことではない。とっとと機上の人となった。

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